2016年12月19日

心愛会50周年によせて

       「トリエステ」のように
                  佐野 愛子

焼津・藤枝二市心愛会創立50周年おめでとうございます。
ひとくちに50年といっても半世紀です。21世紀の現在とは社会環境も医療の環境も全く異なっていた時代に、静岡県初の家族会を立ち上げたということはなんという行動力でしょう。精神の障害には家族同士のつながりが大切であること、精神障害に対する正しい知識や理解が必要なことを会員とともに訴え続けてきました。また、当事者の社会参加のための作業所の設立、医療費や各種保障制度の獲得も家族会という組織で声をあげてきた成果であります。歴代の会長様始め役員や関わってくださった方々の献身的なご尽力に心より敬意を表します。
 
さて、「イタリアには精神病院がない」ってご存知ですか?
イタリアの精神保健医療改革について、昨年静岡県議会の海外調査団が有名なトリエステを視察してきました。人口23万6000人の街トリエステでは、当時入院患者が1200人いましたが段階的にベットを減らしていき、それに替わる地域サービス網を作っていったのです。4か所ある地域精神保健センターは24時間オープン、夜間救急時のベットは総合病院に用意されています。24時間ケア付きの住居やデイケアセンターなどに加え、医師、看護師を始めとする専門職や多くの職員も導入しました。トリエステでの成功例を基に、1999年にイタリア全土の精神科病院の完全撤廃が宣言されたのです。
 日本でも法制度が変わり、精神障害者の地域生活への移行を促進する方向性が示されています。地域で生活するにはトリエステのように理想的な支援の整備体制を整えることはもちろんですが、周囲の意識改革がポイントとなります。精神障害者に対する差別、偏見を少しずつでも減らして、みんなで見守るという社会を作っていかなければなりません。
今年春からは「障害者差別解消法」が施行され、県でも障害者の差別をなくす条例が成立します。みんなの人権が尊重されて命が大切に守られるために心愛会のみんなも自信をもって様々な声をあげていきましょう。医療費の無料化やJR賃金の無料化などの今後の課題に向けても活動を続けていきましょう。

あと50年後の100周年には、藤枝、焼津、島田がトリエステの街のようになっているでしょうか。


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