2020年06月27日

リニア中央新幹線現地視察

ふじのくに県民クラブリニア中央新幹線 現地視察報告
                 文責   佐野愛子 

1 視察概要
 
日時令和2年6月9日(火)

参加者○危機管理・くらし環境委員会:四本委員長、小長井委員、阿部委員
○リニア対策PT:佐野座長
○JR東海:静岡工事事務所副所長 島川 徹氏、係長 陰地 勝也氏
○静岡県:織部理事、田島理事、その他関係課職員

目的・リニア中央新幹線静岡工区の現状を視察することにより、6月議会、委員会等の提言に役立てる。
・県民に南アルプスのリニア工事の現状を伝え課題を共有する。

視察行程県庁出発(8:30) → 井川湖 → 白樺荘(11:00)→   
畑薙ダム → 林道ゲート(12:00)→ 椹島(現場宿舎、導水トンネル排水口)→ 燕沢(発生土置き場) → 千石沢(コンクリートプラント)→ 千石(現場宿舎、工事用トンネル抗口)→ 二軒小屋
(16:00)→ 井川湖 → 閑蔵林道 → 長島ダム → 千頭
 → 国道362号線 → 県庁(19:30)


2 視察内容

 (1)市街地からの主要県道
  
 県庁から、主要地方道南アルプ公園線、県道三ツ峰落合線を通り井川湖、そして畑
薙の林道ゲートまで3時間、83km。片側一車線の県道は曲がりくねり対向車とのす
れ違いも困難な箇所が多い。
  井川地区の集落にとってこの県道の改良は悲願
であり、リニア工事の代償として静岡市はトン
ネル新設の協定を10日JR東海と締結した。
富士見峠の部分をショートカット、20数分の短
縮になる。全長4.6km、140億円をJR東海
が全額負担するという内容である。
   それにしても、関係者や工事車両が現地に向かうには相当な時間と労力を費やすことになる。
   この場所も岩石はもろくトンネル工事は相当な難工事になると思われる。

(2)林道東俣線

東海フォレストの所有地であり通行許可が必
要である「林道東俣線」に入る。この林道は災
害の影響を受けやすく路肩が崩れたり、車道が
落石に覆われたりして走りにくいのはもちろん、
しばしば通行止めになる。
 現在も台風19号の影響で山側から押し寄せ
た大量の土砂で道路をふさいだ部分の復旧に手
間がかかり、河原を走る仮道が数百mある。
また、赤沢崩れは山頂から広く崩れ、土砂が
  本流を埋めて畑薙橋の橋げたまで着いてしまっ
  ている。これ以上増えたら橋が流されるかという予断を許さない状況である。
現在入り口付近から林道整備を始めてはいるが、ゲートからリニアトンネルが通る西俣までの約20kmの整備は、まず最初に進めるべき課題である。


(3)椹島宿舎建設地

椹島と言えばかつては林業の中心地であり、南
アルプス登山の拠点であった。ビジターセンター、
ロッジ、レストラン、カフェテラス、そして昨年
逝去された山岳写真家白幡次郎さんの写真ミュー
ジアムなどがあり、源流と山々を望むことができ
る憩いの場所となっていた。
しかし今は様変わりし、椹島ロッジの敷地を取り
  囲むように工事用の宿舎の建設が広く進んでいる。
100名規模で生活できる宿舎は、使用後はホテル
として活用する計画だという。



(4)椹島導水路トンネル排水口

トンネル工事で出た湧水を工事地点から
11.4kmのトンネルを通り自然落下で椹島に
て源流に排水する。
濁水をどのように浄化し排水するのか、処
理施設はどの場所へ建設するのかなどの質問
に対して、JR東海の説明は不十分。
濁りはなくとも重金属など有毒物質が含ま
れている場合もあり、それらの質問に対して
の回答は「出たとこ勝負」という程度であり
納得できるものではなかった。
断面積10~20㎡のトンネル内に浄水施設を数基並べるという計画も実現性に乏しく感じた。


(5)燕沢発生土置き場

台風19号で多くの土砂が流れ出た付近で、
既に5,6mの礫が積み上がっている。
この場所に長さ600m、高さ70m、総体積
360万㎥もの山を作ることになる。
途中には崩れている沢が2,3か所あり、土
を積んでも山からの礫が押し出したり、川の増
水が残土の山を削り取ることも歴然であると伺
えた。


 (6)千石沢コンクリートプラント

椹島の宿舎建設用のコンクリート製造拠点。
本体工事が始まればトンネル工事用のコンクリートが工事
用トンネルから供給されることになる。
コンクリート製造時やミキサー車から出る汚水対策のた
めに処理施設も建設。


(7)千石非常口、工事用トンネル坑口

ポールの左右4.5m、径9mが抗口となる
場所。この表土を買収すれば後はトンネルを掘り
進めることになる重要な地面となる。

 
(8)千石宿舎

300人が生活する宿舎。現在は80人ほ
どが生活している。10棟ほどあるが、背後
は崩れ落ちている沢が幾筋も見える。
大雨が降ったら宿舎まで土砂が押し寄せる
のではないか。また大勢の作業員の生活に伴
う汚水や廃棄物など自然環境を損なうことは
否めない。


(9)二軒小屋付近

かつて会派の視察で宿泊した素敵な高原ロッジ。今は営業を休止している。周辺はたくさんの宿舎が建設され景観は変わっていた。


(10)長島ダム

帰途は国道362号線に向かった。途中にある長島
ダムは国土交通省によって建設された利水、灌漑を目的
としたダムである。
ここから、大井川流域62万人の産業や命を支える水
を供給していることを改めて確認し、自然と人間との共
生について考えさせられた。


3 課題と考察
 
・JR東海は排水口や工事用トンネルについて、今すぐにでも掘削を始めるという感を受けた。作業用宿舎やヤード、林道整備はあくまでも準備工事であるが、トンネル口掘削は本体工事に入るという認識をしっかり確認する必要がある。

・南アルプスには水脈である破砕帯だけでなく年間4ミリ動いているという畑薙断層が通っている。仮にリニアトンネル内でずれが生じた場合、安全性が保たれるのか。

・山岳地帯である南アルプスの自然は、豊かであると共に大変厳しくもある。人工で手を加えてもそれ以上の脅威をふるう可能性を感じた。




Posted by 佐野 愛子 at 16:00│Comments(1)
この記事へのコメント
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Posted by 署名 at 2020年09月14日 15:16
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